【丸投げ注意】新規事業コンサルの正しい使い方
【丸投げ注意】新規事業コンサルの正しい使い方

【知らなきゃ損】新規事業コンサルの選び方 ~ 両利きの経営とコンサルティング~

作成日: 21/05/10 06:58
更新日: 21/05/10 06:58

新規事業担当に任命されたあなたは、今後どうやってプロジェクトを推進していくか検討するために、まずは情報収集をすることになるでしょう。ここで、「既にノウハウを持っている人に聞く」というのは、わかりやすい解決策です。したがって、外部のコンサル活用は有力な選択肢の一つになるでしょう。

日本でコンサルティング会社を起用する文化が浸透してきたのは、1980年代頃からです。某金融機関の組織改革プロジェクトがコンサルティング活用の起源となったと言われています。それ以降、様々な業界・職種におけるコンサル活用が始まりました。ホットになるテーマに合わせてコンサル会社もどんどんソリューションを開発していきます。ここ数年で、新規事業開発支援は、一つのコンサルティングサービス領域として、成長を続けている印象があります。

かく言う私も、新規事業領域のコンサルタントとして仕事を一部しています。しかし、その使い方には注意が必要です。本稿ではコンサル会社側の事情も含めて、コンサル活用時に事業会社側が注意するべきポイントを共有させて頂きたいと考えています。

この記事を書いている人(自己紹介)

はじめまして、片倉健です(略して「カタケン」と呼ばれることが多いです)。私は大学を卒業後、新卒でアクセンチュアという外資系コンサルティング会社に就職し、同社の戦略コンサルタントとしてキャリアをスタートしました。その後、ビジネス書籍の要約サイト「Flier(フライヤー)」の共同創業者として起業家の道に進みました。同社を退職後、大企業向けのコンサルタント経験と起業家の経験を掛け合わせて、「成熟した大組織で新規事業を立ち上げる方法」の研究をスタートしました。それから約7年間、複数のクライアント(レガシー日本企業)に深く関与し、数多くの新規事業の立ち上げを試みました。成熟した大企業で新規事業を立ち上げる際に、現実問題として一体何が起こるのか、その問題を解決するために何をしたのか、この経験から得た知見をブログ記事として共有していきたいと思っています。

コンサル会社のビジネスモデル

まずは、コンサル会社のビジネスモデルをご紹介したいと思います。コンサル会社の売上高は多くの場合、「人数 × 単価 × 期間」で決まります。「単価」はコンサル会社の実績に応じて様々ですが、中には一人を一カ月フルで動かしたら数千万円(一人月単価と言います)というコンサル会社も存在します。たった一人を1年間雇うだけで「億」です。

「人数」が収益計算式の変数に入っているということは、コンサル会社からすると、できるだけ多くの人数が入れるプロジェクトを受注すると、それに合わせて売上も大きくなります。コンサル会社もビジネスであり、上層部は売上責任を持っていたりします(そうではないコンサル会社もあります)。

最後の変数は「期間」ですが、短くて3カ月程度で終わる案件も存在しますが、3か月ごとに案件を獲得するための営業活動をし続けるのはコンサル会社の営業マンにとっても大変なことです。ですので、できるだけ期間の長い案件を受注する方が経営としては楽なわけです。一方で、若手コンサルは多様な経験を積みたいので、短期の案件を希望したりします。なので、営業責任を持つ上席者は、もっともらしい理由を付けて、長期案件の魅力をしきりに若手に語ろうとするのです(本当に価値があるかは、人それぞれです)。

コンサル会社目線で語る理想のクライアントの条件は、自社の単価レンジ受け入れてくれて、沢山のプロジェクトメンバーが稼働でき、できるだけ期間の長い案件が得られることです。例えば、基幹システムの大規模刷新プロジェクトなどは、経営戦略 ~ IT戦略 ~ 開発・保守、さらには各種BPOまでを受注できる、コンサル会社で偉くなりたい人にとっては最高の案件となります。どれだけの人数を自分の部下として稼働させられたか、ということが自分の生み出す売上高(成績指標のひとつ)に直結します。

一方、新規事業系のコンサルプロジェクトは、その正反対の性質を持ちます。コンサル会社目線でいうのであれば、予算は小さい上、急にプロジェクトが止まるので、美味しくありません。本業の収益が極めて莫大で、新規事業戦略に巨額の予算を割くことができる会社も中にはあるのかもしれませんが、私の知っている限り、こうした会社はマイノリティーです。

従いまして、私個人の感覚でいうならば、コンサル会社において新規事業領域の案件を請け続けることは、社内で出世したいのであれば合理的な選択肢ではありません。私の知っている限りでは、新規事業領域のコンサルタントは「新しい物好き」「変わった人」という印象です。出世もこなす器用なコンサルタントであれば、8割くらいは新規事業以外のコンサル案件でマネタイズし、2割くらいを新規事業案件にして、収益性を担保しつつ、チームを回しているのではないでしょうか。若手コンサルタントとしても、こういうリーダーシップをとれる上司に付いていきたがるものです。

優れた事業アイデアがあるなら、自分でやれば?

私は新卒でコンサルティング会社に就職して、その後、起業家になりました。立ち上げたベンチャーを辞めて再び起業し、今の会社を経営しています。一般的に、新規事業戦略のコンサルタントに対するストレートなツッコミは、「新しいことをやりたいなら、リスクを取って自分でやれば?」というものです。この質問に対して、コンサルタントがどう思っているのか、考えられる回答パターンを三つ紹介したいと思います。

回答① 単なる「いくじなし」

まず一つ目の回答は、自分でリスクを取ってまで新規事業にチャレンジしたいとは思わない、だって自分にも生活があるもん!という話です。要は、楽しそうだから新規事業コンサル案件はやってみたいけれど、自分でリスクを負う勇気がない、というタイプの人です。私の勝手な解釈ですが、大半はこのタイプでしょう。格好が悪いので「あっ!自分の場合、まさにこれです!」と名乗り出る人は殆どいません。コンサルタントは何かと理由付けが得意なので、もっともらしい回答を用意することで、自分の本心そのものから誤魔化したりします。

コンサルティング会社の給料は、一般的な企業と比較すると非常に高額です。20代で1千万円超、30代で数千万円(場合によっては億単位)は貰えるでしょう。ブランド品大好きの家族や私立名門に通う子どもがいて、毎晩西麻布で飲むのが大好きで、場合によっては義理の親の介護なども重なり、週末には自分には好きな趣味もある、、、この状況において、その高額な報酬を捨ててまで、新しいチャレンジをしたいと思うでしょうか。ハイブランドの名刺を捨てて、ユニークな新規事業アイデアに挑戦する起業家になれば、一気に貧乏生活になるかもしれません。

ここで、事業会社目線の話に移します。新規事業コンサルを雇うとき、このタイプを引いてしまうのが完全な外れくじになります。彼らには「自分のカネだ」という覚悟がないわけですから、「自分のアイデアの確からしさ」を検証するために、ひたすらにあなたの会社のお金を浪費するでしょう。高額なコンサルフィーの請求書と「あなたのためにやっています!」というメッセージが送られてきます。

もっと欲深く、コンサル会社でどんどん出世したいという欲まである人は、「事業をスケールさせるためには、もっと投資するべきだ(お金ください)」と言ってきます。クライアントに無駄な出費をさせる前に、一回自分で起業して出直すべし、というのが私からコンサルタントへのアドバイスです。単にプレーヤーとして新規事業をやりたいなら、リスクを背負って自分でやればいいでしょう。

回答② 大企業じゃないとできないビジネスがある

次によく聞くのは、上記の言葉です。コンサルタントは詭弁を正論風に語るのが得意ですが、この主張は実際のところかなり疑わしいと言わざるを得ません。海を渡れば、ベンチャー企業が月や火星に向けてロケットを飛ばしたり、穴を掘って車を走らせたりしています。大企業だからといって、ハイリスクな事業に投資できるわけではありません。むしろ、派手にお金を使ってイノベーションをおこしたいのであれば、それこそベンチャー起業家をやったほうがいいと思います。

この話に対して「別に私は投資資金の話をしているのではない」とコンサルタントは指摘してきます。なので、別の見方もしてみましょう。次に考えられるコンサル側の主張は「その会社固有の強みを活かした、新しいビジネスが存在するからだ」ということになります。確かにこれは論理的には正しいでしょう。

しかし、一緒に働いたこともない社外のコンサルタントが、数カ月間プロジェクトを一緒にしただけで(あるいは初見で)クライアントの強みを正確に見抜き、事業開発をリードしてくれる、なんてことは果たして現実的に起きうるのでしょうか。もし、それができるスーパーコンサルなら、私からのメッセージは単純です。「君は素晴らしいコンサルタントだ、もはや映画化したいレベル!」ということになります。

解答①②に該当するコンサルタントの見分け方は非常に簡単です。彼らは面白い新規事業アイデアをキレイなパワーポイント資料にまとめて提案してきて、「あなたの会社の強みを利用すれば、こんなビジネスができる」と言葉巧みに語ります。そして「是非プロジェクト支援をさせてください。つきましては、コンサル費用のお見積りは『1億円』でございます」と提案してきます。

回答②のケースかつ天才コンサルタントではない場合において、事業会社側がこの手の提案にお金を払うと、ロクな結果にならないでしょう。ただし、レベニューシェアの事業モデルを提案してくるコンサルタントがいる場合は別です。それはやってみてもいいかもしれません。これは単純に費用対効果の話です。一所懸命働く優秀なリソースを安く雇えるなら、それは使ったほうがいいかもしれない、という意味です。

回答③ 成熟した大企業であっても、新規事業を立ち上げる機能が必要(両利きの経営の実現)

「大企業で新規事業戦略をやりたいなら、自分でやれば?」というツッコミに対する最後の回答は上記の内容③です。ビジネス書界隈でベストセラーとなっている「両利きの経営」という書籍があります。同書のエッセンスは、成熟した大企業においても、既存事業の改善活動(深化)だけではなく、新しい事業を生み出していく必要がある(探索)というものです。

これに対して、「新しい事業をゼロから立ち上げる必要などない。事業のシーズは買収すればいい」という考え方もひとつでしょう。この発言について興味深いのは、自分がリードして事業シーズを買収し、主力事業までグロースさせた経験の無い人に限ってこういう発言をすることです。シーズを買収して育て上げる行為は、ゼロから立ち上げる場合と比較して簡単である、とは限りません。確かに「ゼロから新規事業を立ち上げる」のは難しいですが、「種を買ってきて、相応の規模まで育てる」のには、別の難しさがあります。

もしあなたの会社が、「両利きの経営を目指すべきだ」と考えるならば、仕組み構築支援系のコンサルタントであれば、活用する経済的合理性があるかもしれません。彼らは、プレーヤーではなく、新規事業を生む仕組みを創出するコンサルタントになります。仕組みの構築には一定の再現性があるので、彼らが持っている他社事例には、相応の価値があるかもしれません。

ただし、このタイプのコンサルを起用する上でも、大きな注意点があります。それは、彼らの持っている仕組化ノウハウが、自社の企業文化にフィットするかどうか、しっかり見極めるべきだ、ということです。

例えば、どう考えても日本最高峰に頭の固い経営層しかいない歴史と伝統のある大企業があったとしましょう。彼らがトップに君臨する企業に、スタートアップ起業家流の「渋谷ノリ」をいくら説明しても、その手法を取り入れるのは簡単なことではありません。仮にそのコンサルタントに実績があったとしても、実績のある導入先が自社と同じような企業文化だったのか、その取組みが導入先で継続されているのかを見極めましょう。

手法は簡単です。「あなたのノウハウの導入を前向きに検討しています。もしよろしければ、過去にそのノウハウを導入した顧客にインタビューをさせてもらえませんか?」と聞けばいいでしょう。このタイプのコンサルで口だけの人の場合は、「機密性が高いので、顧客情報は出せません!」と断ってくると思います。

ここで、このように追い打ちを掛けましょう。「あなたのノウハウを、あなたのクライアントがどう感じたのか、という客観的な意見を聞きたいだけで、機密情報とは関係ないと思いますが」

この質問に対して塩対応するコンサルタントは、実績のない焼畑農業型 or 単なる詐欺師かもしれませんのでご注意を!

以上が私が考える、新規事業コンサルの活用法です。事業会社の皆さんは、是非参考にしてみてください。

そして、私がなによりお伝えしたいのは、コンサル会社など使わなくても新規事業開発を進めることはできる、ということです。もちろん、予算に余裕がある場合は活用した方が効率性が高まると思います。

以下の記事で、大企業における新規事業開発について、私が培ってきたノウハウを一挙公開させて頂きました。もちろん無料で読めますので、関連記事として是非ご覧ください。

【最強マニュアル】新規事業の立ち上げプロセス 〜 大企業編 https://note.com/notes/ne201a7065c58/

※受付後、メールにてご回答致します。

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